2016.06.02 UP

5/28、29に新入生オリエンテーションが八王子セミナーハウスにて開催されました。

2016年度 新入生オリエンテーション・懇親ワークショップ

課題趣旨
大学セミナー・ハウスの「ディテール」を感じ、描き「ことば」にする

「大学セミナー・ハウス」と「ことば」
 八王子郊外の丘陵地に建つ「大学セミナー・ハウス」は、吉阪隆正の手による幾多の名建築のなかでも、その誕生の経緯や出来上がった空間のユニークさにおいて際立っている。「セミナー・ハウス」 という語を新造した初代館長の飯田宗一郎によると、戦後マスプロ化した大学教育への不満、日本の 大学に蔓延する閉鎖的風土への危機感などが、彼をして「大学の現況を至近距離から観たものでなく、 現実の深層に入って、最も原理的なものを現代に回復させる事をめざ(1)」させ、「大学セミナー・ハ ウス」を着想するに至ったという。
 今や広く普及した「セミナー・ハウス」ということばはもちろん、大学のゼミとは別の意味で私たちが通常イメージする「セミナー」ということばすら、「大学セミナー・ハウス」の前には存在しな かった。従って、セミナー・ハウスの設計を任された吉阪は、当時の大学教育やそのための施設の既成概念から距離をとって、「セミナー」という新しい概念と、それを具現化する全く新しい空間のあ りようについて、根源から探る必要に迫られたわけである。
  
 大学セミナー・ハウスの場合は、既存の大学のように前例のあるものではないから、セミ ナーとはなんぞや、セミナーの運営がうまくゆくために何をなすべきか、等々疑問はいくら でも生じて、この答を得る為に多くの方々の協力を求めた。(2)
 そうした中、吉阪は、幾度となく「ことば」の力を借りながら、飯田の「大学セミナー・ハウスを つくりたい」ということばを、「姿形として翻訳(3)」していった。
 いろいろな概念を代わる代わる試してみる。またまた、セミナーとは何か、セミナーに集 まる人たちは何をするのか、どういうことになったらセミナーがうまい結果を生んだと言えるのか・・・など様々な角度からの検討がこれを助けてくれる。(4)
 こうしてことばから姿形が紡ぎ出されると、今度は逆に、姿形がことばを生み出して、空間の気分 を伝える力をもつようになる。吉阪は、「大学セミナー・ハウス」の設計プロセスに関する回想文のなかで、基本設計が終わった段階で、再度「ことば」の力を借りたことについて、以下のように綴っ ている。
 ここでまたことばの厄介になる。曰く、「新しい大学のあり方を、ここ柚木の丘に打ち立て るべく楔を打ち込んだのだ」、「入口は狭いようでも、中へ入ると広く深く、あちらこちらは ずーっとつながっていて、学問とはそんなものだ」、「かつてハイカーたちがゴミを残してい った所は、人々が好んでたむろする所だ」、「一人一人が己の城を持つことが、自分の意見を もつようになるもとだ」・・・(5)
 このように、「すがた」は、その出生からして「ことば」と深く結びついている。そしてその関係性は一方向のものではなく、「ことばから姿へ、姿がことばに(6)」という相互的なものである。

「大学セミナー・ハウス」と「ディテール」
 大学セミナー・ハウスには、多くのディテール(細部に至る設計)がちりばめられているが、その かたちを注意深く観察すると、人が建築と握手する手摺や取手のような部分から、内部と外部とが繋がる扉、自然の風景・光・風を取り込むための窓など、あらゆる関係性が、部分のデザインに凝縮されており、それは同時に、一見異なった形の建物群全体に統一感を生み出していることが分かるだろう。
 設計をしながら全体像を追求する場合、全体と部分の関係は注意深く検討されなければならない。触れるという意味はそのほとんどの場合が手で触れることを示すのだろうが、心に 触れるという言葉もあるように、何か人間にとって大切な行為であり心理なのだろう、、、われわれが思わず原寸にかりたてられるのは、全体と部分の関係にとって、そのあるべき姿は何かをみきわめようとするからであって、またそうしながら、みずからさわることによって、 何かを認識しようとしているのかもしれない(7)。
 ディテールは、それぞれは小さな「部分」であるが、それら単体で成立しているのではなく、他の「部分」と共鳴しつつ、集積することで、「全体」を形成している。「部分」は「全体」に従属的なのではなく、それらの間には(吉阪の「ことばから姿へ、姿がことばに」という表現になぞらえるならば)、「全体から部分へ、部分が全体に」という相互的な関係性が成立しているのである。

大学セミナー・ハウスの「ディテール」を感じ、ことばにする
 今年度のオリエンテーションでは、新入生の皆さんに、大学セミナー・ハウスの敷地内を踏査し、様々なディテールを探し出してもらう。そして、そのなかで特に気に入ったものを選んで、そこからインスピレーションを得て絵を描くとともに、そのディテールにどのような魅力を感じたのかを考え、解釈し、ことば(文章)にして、絵とともに一枚の大きな紙のうえに表現してもらう。
 皆さんが発見したディテールは、他の「部分」や、それに触れる「人々」、あるいはセミナー・ハウスという「全体」等と、どのような関係性を取り結びつつ、どのようなことばを、皆さんに語りかけてくるだろうか。感受性を研ぎすまして感じ、創造力豊かに表現してほしい。

参考文献
(1)飯田宗一郎:「大学セミナー・ハウスとは何か」、建築文化 Vol.34 No.395、p.34、1979 (2)吉阪隆正:「ことばから姿へ姿がことばに」、建築文化 Vol.34 No.395、p.32、1979 (3)資料(2)に同じ、p.32 (4)資料(2)に同じ、p.32 (5)資料(2)に同じ、p.33 (6)資料(2)に同じ、p.32 (7)吉阪隆正:ディテール、197

課題概要
【フィールドサーベイ】
 グループ毎にフィールドサーベイを行って、セミナー・ハウスの敷地内に、様々な優れたディテ ールを発見して、そのうち特に気に入ったディテールを選ぶ(一つだけ選んでもよいし、複数選 んでも良い)。
【絵をえがく】  
 選んだディテールからインスピレーションを得て、与えられた用紙に絵を描く(ディテールを写 実的に描く、様々な要素をコラージュする、抽象化するなど、表現方法は自由。また、一つの大きな絵でも良いし、いくつかの小さな絵でも良い)。用紙は A0 版で、横使い・縦使い、用いる画材などは問わない。・・・(1)
【ことばを紡ぐ】  
 選んだディテールの持つ魅力や、セミナー・ハウスの他の要素との関係性などについて、グルー プ内で自由にディスカッションし、解釈し、自分たちの考えた事をことばに紡ぎ出して、文章に まとめる。文章の体裁は自由(たとえば、自由詩調でも、論説調でもよい。また、一つの長い文 章でも良いし、いくつかの短い文章でもよい)。 絵を描いたのと同じ A0 版用紙に、紡いだ言葉を、「レタリング」をして書き込む。・・・(2)
【考えを伝える】  
 「(1)絵」と「(2)文章」は、同じ用紙内に適切に配置し、一つの統合されたプレゼンテーションとして表現すること。講評時には、自分たちのプレゼンテーション(絵+文章)について、各チ ーム4分ずつ、口頭で発表してもらう。
【その他】  
 講評会では、優れたディテールの発見とそこからの気付き、ディテールに対する深い理解と解釈、 すぐれたことばの表現などを勘案し、総合的に判断して評価を決定する。その後、優秀作品を選び、表彰と全体講評を行う。
・ 1グループは9〜10名とし、メンバーは建築学科

使用材料
サンフラワー紙A0、鉛筆, その他 基本画材


【投票結果】
金賞「火の鳥ジャッ班」
韓嘉豪、吉川伊織、木村貴広、久米悠介、栗山亮、桑田祥平、河合七海、河南奈々子、後藤 佑美、小浜まほろ

銀賞「KARS」
勝又洋人、加藤時空、金子海月、上高原将礼、神谷悠大、川俣隆史、粕谷彩乃、加藤公花、蟹江梓乃、亀田琴未

銅賞「十人十色」
棚田有登、種田駿、種子田裕之、近重慧、月森十色、土屋京史、谷口瑞季、辻可那子、東野友紀、徳田華

以上