2017.06.21 UP

6/17、18に新入生オリエンテーションが八王子セミナーハウスにて開催されました

2017年度 新入生オリエンテーション・懇親ワークショップ

課題趣旨
大学セミナー・ハウスの「かたち」と「ことば」

大学セミナー・ハウスのさまざまな「かたち」とその関係を発見し、描き、「ことば」を紡ぐ

 今年度のオリエンテーションでは、新入生の皆さんに、大学セミナー・ハウスの敷地内を踏査し、大小様々な「かたち」を探し出してもらう。そして、そのなかで特に気に入ったものをいくつか選んでよく観察し、その魅力や相互関係を解釈して、そこからインスピレーションを得て絵を描くとともに、その過程で考えたことを「ことば」(文章)にして、絵とともに大きな紙のうえに表現してもらう。

 皆さんが発見した「かたち」は、それと関わる人の振る舞いとどのように呼応しているだろうか。また、さまざまな「かたち」同士は、互いにどのような関係をなしているだろうか。「かたち」が皆さんに語りかけてくる「ことば」に耳をかたむけ、創造力豊かに表現してほしい。

「大学セミナー・ハウス」と「ことば」

 八王子郊外の丘陵地に建つ「大学セミナー・ハウス」は、吉阪隆正の手による幾多の名建築のなかでも、その誕生の経緯や出来上がった空間のユニークさにおいて際立っている。「セミナー・ハウス」という語を新造した初代館長の飯田宗一郎によると、戦後マスプロ化した大学教育への不満、日本の大学に蔓延する閉鎖的風土への危機感などが、彼をして「大学の現況を至近距離から観たものでなく、現実の深層に入って、最も原理的なものを現代に回復させる事をめざ(1)」させ、「大学セミナー・ハウス」を着想するに至ったという。

 今や広く普及した「セミナー・ハウス」ということばはもちろん、大学のゼミとは別の意味で私たちが通常イメージする「セミナー」ということばすら、「大学セミナー・ハウス」の前には存在しなかった。従って、セミナー・ハウスの設計を任された吉阪は、当時の大学教育やそのための施設の既成概念から距離をとって、「セミナー」という新しい概念と、それを具現化する全く新しい空間のありようについて、根源から探る必要に迫られたわけである。

 大学セミナー・ハウスの場合は、既存の大学のように前例のあるものではないから、セミナーとはなんぞや、セミナーの運営がうまくゆくために何をなすべきか、等々疑問はいくらでも生じて、この答を得る為に多くの方々の協力を求めた。(2)

 そうした中、吉阪は、飯田の「大学セミナー・ハウスをつくりたい」ということばを、「形姿として翻訳(3)」していった。

 いろいろな概念を代わる代わる試してみる。またまた、セミナーとは何か、セミナーに集まる人たちは何をするのか、どういうことになったらセミナーがうまい結果を生んだと言えるのか・・・など様々な角度からの検討がこれを助けてくれる。(4)

 こうしてことばから形姿が紡ぎ出されると、今度は逆に、形姿がことばを生み出して、空間の気分を伝える力をもつようになる。吉阪は、「大学セミナー・ハウス」の設計プロセスに関する回想文のなかで、基本設計が終わった段階で、再度「ことば」の力を借りたことについて、以下のように綴っている。

 ここでまたことばの厄介になる。曰く、「新しい大学のあり方を、ここ柚木の丘に打ち立てるべく楔を打ち込んだのだ」、「入口は狭いようでも、中へ入ると広く深く、あちらこちらはずーっとつながっていて、学問とはそんなものだ」、「かつてハイカーたちがゴミを残していった所は、人々が好んでたむろする所だ」、「一人一人が己の城を持つことが、自分の意見をもつようになるもとだ」・・・(5)

 このように、吉阪のしごとのプロセスにおいて、形姿はその出生からして「ことば」と深く結びついている。そしてその関係性は一方向のものではなく、「ことばから姿へ、姿がことばに(6)」という相互的なものである。

「大学セミナー・ハウス」と「かたち」

 吉阪は「かたち」を、ただ見た目の心地よさ、うつくしさに止まらず、世界観の表出のすべとして捉えていた。そして、人間生活(ひと、くらし)と建造環境(もの、かたち)のかかわりをみつめなおし、その新たな結びつきを探る「有形学」を提唱したのである。

 建築の設計は、世界観、人生観にはじまる。それを形姿あるもので表現しなければならぬ。(7)…人間居住としてどのように歓びのある生活をつくり上げるかを発見するためには、物の姿を通じて生活との絡み合いを知る必要が生じて有形学をつくらせる。…(中略)…有形学を考えた動機は人類が平和に暮らせるようにとの願いだ。(8)

 大学セミナー・ハウスの敷地を歩き回れば、実にさまざまな「かたち」が目に飛び込んでくる。多摩の丘に楔を打ち込んだように屹立する本館のかたち。宿泊ユニットが地形に呼応するように描くゆるやかな弧のかたち。さらには、随所にちりばめられたディテール(細部に至る設計)のかたちには、人と建築、内部と外部などあらゆる関係性が凝縮されていることが読み取れる。

 普段わたしたちが都市で目にする多くの建築物の中で、ひとつひとつの「かたち」がこれほどまでに丁寧に考え抜かれ多様であるものは、殆どあるまい。さらに大学セミナー・ハウスの大小さまざまな「かたち」は、それぞれが自律しつつも、他の「かたち」と共鳴しつつ、集積することで、「全体」を形成している。そのため、これほどまでに多様なかたちがひしめいているにもかかわらず、建物群全体には緩やかな統一感が感じられる。


引用文献
(1)飯田宗一郎:「大学セミナー・ハウスとは何か」、建築文化 Vol.34 No.395、p.34、1979
(2)吉阪隆正:「ことばから姿へ姿がことばに」、建築文化 Vol.34 No.395、p.32、1979
(3)資料(2)に同じ、p.32
(4)資料(2)に同じ、p.32
(5)資料(2)に同じ、p.33
(6)資料(2)に同じ、p.32
(7)吉阪隆正+U研究室:「DISCONT:不連続統一体」、アルキテクト編、丸善、p.7、1998
(8)吉阪隆正:「生活とかたち-有形学」テレビ大学講座テキスト、 旺文社、1980

関連図書
(1)齊藤祐子:「吉阪隆正大学セミナーハウス」、建築資料研究社、2016
(2)2004吉阪隆正展実行委員会:「吉阪隆正の迷宮」、TOTO出版、2005
(3)アルキテクト:「好きなことはやらずにはいられない 吉阪隆正との対話」、建築技術、2015



課題概要

【フィールドサーベイ】
グループ毎にフィールドサーベイを行い、セミナー・ハウスの敷地内に、さまざまな「かたち」を発見して、そのうち特に気に入った「かたち」を採集する。セミナー・ハウスの他の要素との関係、すなわち「かたち」同士の関係性などについて、思いを巡らせながら採集すると良いだろう。

【絵をえがく】
選んだ「かたち」からインスピレーションを得て、与えられた用紙に絵を描く(写実的に描く、様々な要素をコラージュする、抽象化するなど、表現方法は自由。また、一つの大きな絵でも良いし、いくつかの小さな絵の組み合わせでも良い。これまでに建築表現Iの授業で習得した手法を含め、建築表現を試みるとよいだろう。用紙はA0版で、横使い・縦使い、用いる画材などは問わない。・・・(1)

【ことばを紡ぐ】
選んだ「かたち」の持つ魅力や、「かたち」同士の関係性などについて、グループ内で自由にディスカッションし、解釈し、自分たちの考えた事をことばに紡ぎ出して、文章にまとめる。文章の体裁は自由(たとえば、自由詩調でも、論説調でもよい。また、一つの長い文章でも良いし、いくつかの短い文章でもよい)。
絵を描いたのと同じA0版用紙(枚数自由)に、紡いだ言葉を、「レタリング」をして書き込む。・・・(2)

【考えを伝える】
「(1)絵」と「(2)文章」は、同じ用紙内に適切に配置し、一つの統合されたプレゼンテーションとして表現すること。
オリエンテーションの講評時には、自分たちのプレゼンテーション(絵+文章)について、各チーム4分ずつ、口頭で発表してもらう。

【その他】
講評会では、優れた「かたち」の発見とそこからの気付き、「かたち」に対する深い理解と解釈、すぐれたことばの表現などを勘案し、総合的に判断して評価を決定する。その後、優秀作品を選び、表彰と全体講評を行う。
1グループは9〜10名とし、メンバーは建築学科で決定する。



講評会
 講堂にて、各グループ4分間で口頭発表する。その後、全教員がシールを用いた投票を行い、優秀発表を数グループ選ぶ。最後に、表彰と全体講評を行う。



【投票結果】
金賞:グループ13
二上匠太郎,西入俊太朗,仁科裕陽,萩小田大我,萩原良季,藤本佳那,藤好果穂,星野希実,松尾純

銀賞:グループ16
赤間悠斗,安達優太,猪股雅貴,今井凪,小野田亮介,柿田哲志,吉田彩華,米澤実紗,林 娉宇

銅賞:グループ1
天田侃汰,飯原康介,猪飼健,池内宏維,池田悠人,池本博喬,天野紗弥香,新井遥