著作権法改正に伴う「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」についての緊急会長声明(日本建築学会)
本学、古谷誠章教授が会長を務める日本建築学会より
著作権法改正に伴う「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」についての緊急会長声明が発表されました。建築の教育、実務全般に関わることであり、周知のためここに転載いたします。
2019年3月11日
日本建築学会会長 古谷誠章
国民の多くは、日常的に様々な形で著作物の私的なダウンロードを行っています。個人の情報収集の自由を保障することは、個人の知的・文化的活動、そしてこれに基づく産業活動を支えていると言っても過言ではありません。
この度の著作権法改正における「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」において、現在の文化庁案は、適法なソースからではない私的ダウンロードについて、その事情を知っている場合には、イラスト1枚、文章数行といった零細なものまでをも違法とし、場合によっては刑事罰の対象とする内容となっています。
このような広範な規制は、多くの国民にとって、教育、研究、創作をはじめとしたクリエイティブな活動を行うための情報収集、コミュニケーション等に対して著しい悪影響を及ぼすと考えられます。建築学の調査研究において、また建築設計等の活動においても同様です。情報収集、コミュニケーション等が妨げられることは、国民が日常的な知的生産活動を行う場合のいわば「肥やし」の供給を断つものであり、その供給が細れば、結果的にクリエイティブな活動の土壌それ自体が痩せてしまう恐れがあります。
今回の文化庁案については、広範な規制範囲に対する懸念とともに、法改正の手続における関係者からの意見集約等についても批判の声が上がっています。
日本建築学会としては、現在の文化庁案の広範な規制には強く反対します。本来の著作権法改正の趣旨であった「海賊版」への緊急対策という趣旨に立ち返り、「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」については法案から削除する、あるいは、現在の法案に「原作のまま」「権利者の利益を不当に害さない場合」という要件を付け加えることを求めます。