早稲田大学の建築教育の伝統として、デザインを重視していることがあります。その中心には「設計製図」と「設計演習」があります。設計製図は「住宅」や「美術館」などの通常の設計課題で、設計演習は「光の箱」や「植物的建築」などの、特に感性を鍛える課題に取り組みます。同時にこれらの課題には平行して学習している専門領域を束ねる役割も期待されており、カリキュラムの芯として学部4年間を貫いています。
早稲田では専門領域の学習も1年生から開始します。1年生の必修科目としてすべての教員の専門分野と建築との関わり、あるいは実社会との関わりを学ぶオムニバス形式の「建築と建築工学」や「建築・都市と環境」、「建築と社会」を配し、建築分野の全体像を把握できるようにしています。1年生から少しずつ専門領域に触れさせ、その統合化の作業として設計製図に取り組む。このプロセスは内容を深め、レベルを上げながら各学年で繰り返されます。学部卒業前に取り組む卒業計画は、専門分野が異なる学生3名による共同設計であり、このプロセスの集大成ということになります。
学生は学部4年に進学すると、建築芸術分野(建築史学・歴史工学、建築意匠・計画学、建築都市計画学)と建築工学分野(建築環境工学、建築構造学、建築生産学)の各研究室に分かれて卒業論文に取り組み専門性を高めます。卒業計画ではこの専門性を超えて共同設計を行います。ですから3名の学生はそれぞれ異なった専門分野の研究室に属していることを条件としています。これは学問上の知識を統合化するということだけでなく、異なった分野の人材とコミュニケーションを取りながら進めるという訓練も兼ねています。これは全卒業計画、全卒業生がプレゼンテーションを行い、内容を教員に説明して審査を受けるという評価方針にもつながっています。