• HOME
  • 新着一覧
  • チューリッヒStücheli Architektenでの半年間のインターンを終えて 修士2年 大沼聖子(古谷・藤井研)

チューリッヒStücheli Architektenでの半年間のインターンを終えて 修士2年 大沼聖子(古谷・藤井研)

IAESTEの海外インターンプログラムを利用し、海外の設計事務所でインターンを経験した大沼さんに、体験談を寄せて頂きました。




++++++++++++++++++++++++++

 私は、修士2年次前期にIAESTEの海外インターンプログラムを利用し、スイスのチューリッヒにあるStücheli Architektenにて、半年間のインターンを行いました。研修派遣先のチューリッヒは、自然と歴史に包まれ、湖を中心とした谷の地形に街が栄えています。東側の丘に位置する住居から西側の丘に位置する派遣先へ、中心のチューリッヒ湖の側を通って毎日トラムに乗って通勤しました。湖を眺めながらの通勤は、スイスならではの楽しみであり、日本の通勤とは異なる自然豊かな光景が強く心に残っています。
 
平日は、9時から18時半までの8.5時間の勤務を行いました。派遣先は50人程度の規模であり、勤務を通して若手から年配の建築家、学生のドラフター、子供を育てながら働く女性の建築家など様々な立場の所員と関わることができました。

日本の企業や学校では上下関係が尊重されるのに対して、派遣先では所員がフラットな関係にあり、普段から昼食でみんなとコミュニケーションを取り、休暇明けにはお互いの休みについて語り合うことが日常でした。常にカジュアルで過ごしやすい事務所の雰囲気も、このインターンを充実させてくれた理由の一つであると感じています。派遣先には、建築家とインターンの学生で構成されるコンペチームが存在しました。スイスの公共建築では、コンペによって設計者を選択することが多く、このコンペチームが事務所のデザインの方向性を決める役割を担っていました。私自身もコンペチームに所属し、模型や3Dモデルの作成を通して、建築家の補助になるよう努力しました。
 
インターンを行なった半年間には、主に「商業・オフィスの複合施設の改修 (Galleria Glatpark)」「国立歴史博物館の新設 (Concorso Nuovo Museo Cantonale Di Storia Naturale)」の2つのプロジェクトに携わりました。スイスでは、古い建築物の保存が重要であり、この二つのプロジェクトでも、既存の建築を残しつつ、現代の都市の文脈に沿って新しい機能を付与するプログラムが組み込まれており、仕事を通して都市の更新のあり方を学びました。

 一つ目のプロジェクトは、モデリングソフトを用いた改修デザインの検討、また図面の作成を行いました。このプロジェクトはチューリッヒの北側のGlatparkというエリアにある商業+オフィスビルの建築を、FLEX WORKINGなどの新しい働き方を盛り込んだ空間に改修するものでした。




二つ目のプロジェクトは、スイスの都市ロカルノの中心地に国立歴史博物館を新設するコンペでした。歴史的な修道院の敷地に美術館を新設し、街の象徴的な場所を新しく更新していく必要がありました。 一つ目のプロジェクトは、元からある建築物を改修する計画でしたが、このプロジェクトは、新築であったため、模型を使って形の検討を行う段階から始まり、コンペのプレゼンのための図面等を作成しました。

スイスの公用語は、ドイツ語・フランス語・イタリア語と地域によって異なることが特徴です。私が滞在したチューリッヒはドイツ語圏でしたが、このコンペの敷地はイタリア語圏であったため、同じスイス内でのコンペであるにも関わらず、提出の際にイタリア語を使用することがスイス特有の面白さであると感じました。
これら二つのコンペに加えて、実施設計の段階に進んでいる建築物のファサードの検討や、事務所のリノベーションに際して、イメージパースの作成等も行いました。



半年間という短い期間でしたが、様々なプロジェクトに携わることができ、非常に充実した研修となりました。

私にとっては、派遣先での研修以外の過ごし方も学びの一つとなり、度々文化の違いを感じる場面がありました。日々の生活における物価の高さには驚かされましたが、文化や芸術、建築に関して学生や一般の人に向けてオープンであることが非常に印象的でした。
例えば、コンサートホールで開催されるオペラやオーケストラのコンサートを非常に安価な学生料金で鑑賞することができ、アートウィークやオープンオペラ・バレエでは、画廊や舞台が一般に解放され、無料で芸術に触れる機会が多くありました。
また、建築に関しても「オープンハウス」と呼ばれるイベントが各都市で存在し、普段は入ることのできない住宅等を設計者の解説とともに見学できる点が魅力的でした。
このような経験から、文化・芸術への尊重と意識の高さを身に染みて感じ、日本でもこのような取り組みが広がることで、若い世代と文化との関わり方が変わると感じました。

 また、スイスにはアルプスの山々に囲まれた広大な自然から、Le Corbusier, Peter Zumthor, Herzog & De Meuronに代表される建築など訪れたい場所が多くあったため、土日の休日を利用して積極的に各地を見学しました。

IAESTEのインターンを通して、学生のうちに海外の建築意匠設計の現場を実際に体験することができ、この経験を将来生かしたいと強く考えるようになりました。半年間は十分
な長さとは言えませんが、スイスの文化や風土を学びながら滞在し、非常に有意義で貴重な期間となりました。

この素晴らしい機会を与えてくださった皆様に改めて感謝申し上げます。
+++++++++++++++++++++++